『 空の青 大地の茶 』
ド −−−−− ン ッ !!!!
バリバリバリ〜〜〜〜〜 グワッ シャ ッ !!!
空間中に破壊音だけが 響いている。
そのうち 空自身にも亀裂が走り粉々になり ―
落ちてくるのではないか そんな気もしてきた。
≪ 2 ! ≫
≪ おう 行くぜ 4 ≫
≪ 2、4! 受け取って! *********** ***** ≫
見えない、聞こえない会話が飛び交い その間を縫って
加速装置を駆使する仲間たちがいる。
≪ 9! ***** **** 8、 データ ある?
2、4! ****** 5 お願い! ≫
フランソワーズは瓦礫の陰に伏せつつ 仲間たち全員に
データを送り続けていた。
・・・ これ 現実?
ううん ・・・ フィクション よねえ ?
そう思いこむ。 そうしないと 神経が参ってしまから。
自分自身の精神を護るために 凄惨な現実をオブラートで包むのだ。
「 お前たちは ロボットじゃない 」
博士は常々 口にする。
「 お前たちは 瑞々しくしなやかで しかも
傷つき易い こころ がある。 それを 護れ。 」
「 身体の損傷は直す。 ワシが直してみせる。
しかし ココロは 治せんのだ。 護れ、自分自身を 」
だから ― これは悪夢。
そうよ ほら ・・・ この前の悪夢も
ちゃ〜〜んと目覚めて 終わったじゃない?
妙な島に幽閉されてるって夢。
おまけに サイボーグ ですって!
SF小説の読みすぎだ・・・って
お兄さんに笑われるわね
お ・・・ 兄ちゃん・・・?
あ あら?? 彼は どこ?
わたし なんでこんなトコにいる の
「 これは 夢。 とんでもな悪夢。
ね 夢なら必ず覚める。 それまで我慢すればいいだけ。
ほら 皆もそう思ってるにきまってる 」
自身の身も護りつつ 仲間たちの状況に神経を集中する。
誰が 今 どんな情報を必要としているのか ―
それを瞬時に判断し 最適なデータを送る ・・・
それが 003の任務だ。
・・・ あ?
009って こんなに無表情だった・・・?
索敵の合い間に ちらっと視界を掠めた仲間の表情が気になった。
最新型・最強の彼は 固い、というか ほぼ無表情で
的確に作戦を遂行している。
ミッション中 だから・・?
他の皆は・・・
油断なく 他のメンバーも観察してみたが
全員が 表情筋をまったく動かしてはいない。
≪ 4 ! 大丈夫? ≫
≪ 誰に向かって言うか! ≫
もともと表情をあまり動かさない004は 今や完全に
無表情だ。 冷静に冷徹に そして 正確に。
目標を撃墜している。
・・・ 怖いくらい ・・・
でも わたし 知ってるから。
あなたの繊細な瑞々しい感性を !
そうでなければ あんな素敵な
演奏はできないわね
≪ 7 ! お〜らい? ≫
≪ 御意。 ≫
日頃の剽軽さと その洒脱な表情はどこへやら
007も 固まった顔付きだ。
周囲を誰よりも的確に観察し 敵の隙を
的確に見破り突いてゆく。
ああ ホンモノの役者なのね
相手の心情を読む のはお手のもの。
・・・ 怖いくらい ・・・
ええ だから 素顔でどんな役柄でも
演じることができるのね
あなた舞台は ・・・ エクセレント!
≪ 8 ! 必要なデータは? ≫
≪ ○○を **** ××を****≫
すぐに詳細な要求が飛んできた。
彼の狙いはいつでも数分先を読んでいる。
彼の手に渡ると 一見不要と思われる情報がみるみるうちに活きてくるのだ。
・・・ 予知能力??
いいえ 彼は膨大なデータから正確に
次の判断をしているわ
ニンゲン・コンピュータ ・・・ ね
怖い ・・・
≪ 3。 大丈夫か ≫
≪ アイヤ〜〜 お嬢。 無理はあかんでぇ ≫
砲撃の合い間に 温かい一言が飛んできた。
≪ ありがとう〜〜 005 006 ! ≫
・・・ 嬉しい ・・・
皆がいるから 皆が頑張るから
わたし ― 耐えられる!
≪ 2! 無事なの?? ≫
≪ ・・・・・ ≫
返信が ない。 いや 雑音混じりの短い通信しか返ってこない。
≪ 2! だ 大丈夫? ≫
目を凝らすけれど 加速装置を駆使しているので
彼の姿をはっきりと捉えることはできない。
! ほっんとに無鉄砲なんだから・・・
一番 心配よ。
なんの報告もないし ・・・
皆に 2を援護してって頼まないと・・・
≪ 皆〜〜 2を ≫
≪ うるせぇっ ! ほっとけ ! ≫
罵詈雑言に近い一言が all で流れ ぷつっと切れた。
は??? なんなの〜〜??
失礼ねっ
彼女は一瞬、本気で憤慨しかけた が。
≪ ほっとけ。 ヤツの好きに ≫
≪ そやそや それでええんや ≫
≪ Leave me alone であるよ ≫
≪ フラン〜 怒らないでくれよ ≫
すぐに仲間たちから取り成す言葉が飛んできた。
≪ ・・・ わかったわ。 ≫
一瞬でも 日常の感情を持ったことで 緊張が少し
緩んだ。
周囲を 当たり前の感覚で見回す余裕が出た。
ふ ん ・・・
ああ でも 皆 すごいわ。
こんな状況でも
優しい心使いもできるのね。
しかし 今 ―
現場で 彼らは赤い特殊な服を纏った九人の戦鬼と化している。
仮面 みたい ・・・
そこに彼らの本来の性格は 全く現れてはいなかった。
ツクリモノ ― まさに 人工物 だ。
そうよね。 サイボーグなんだもの。
機械 なのよ ・・・!
わたしだって ご同様でしょ
自嘲的な薄笑いが浮かんできた。
人間らしい 瑞々しい姿は 奪われてしまったのだ ・・・と。
― しかし。
・・・あ ?
わたし でも、意識してるわよね
意識して表情を 殺してる・・・
そう よ。
ココロを護れ って 博士も。
・・・ そっか。
皆も 同じなんだわ。
ぶるん。 003はアタマを振ると
目の前の現実に 完全に集中した。
仲間たちと自分自身を護るレーダーになり切るために。
感情を心の奥に押し込み 淡々と現実に起きて居る事象に
対応してゆく。
ド −−−−−− ン バリバリバリ ・・・・
グワッシャ −−−− ッ
9人の戦鬼たちが 戦場を駆け抜けてゆく。
「 ・・・ ああ? 」
ふ・・・っと 気がついた。
どうやら ほんの一瞬 意識を失っていたのかもしれない。
彼女は ゆっくりと目を瞬き 慎重に視覚を開いた。
?? な なに ・・・
ここは どこなの??
ああ 空が 青い ・・・
いつの間にか 上を仰いでいたらしい。
目に映るのは どこまでも突き透る青 ― 青い空だ。
あ ・・・ 空よね
そうよ 毎日眺めている空よ
「 やだ ・・・ わたし 夢でも見てたのかしら ・・・
今 は ・・・ ウチにいるのよね?
やあだあ〜 とんでもない夢だったみたい
なんだか ドンパチやってたんじゃない?
戦争映画ってあんまり見たことないけど
すご〜く リアルだったわねえ 」
そろそろと身体を動かす。
どうやら 庭に出したカウチに寝そべっている模様だ。
お昼寝してた ・・・?
あら このお庭、素敵ねえ
お家も・・・ 少し古びてていい感じ
ここ・・・ ウチ?
え わたしのウチは アパルトマン だったわよね
窓を開けると 一番新しい風が入ってくるの。
お日様にも 地上よりちょこっと近いなあ〜って思ってるわ。
お兄ちゃんもそう言ってたもん。
・・・ ここ どこ?
花壇もあるけど ― え なんの音?
風の音? 風が木々を揺すっているのかしら
ざぷ〜〜ん って 何の音・・・?
ねえ ここは どこ ?
「 ・・・ ? 」
「 フラン〜〜 買い物リスト、いい? 」
目の前に 突然茶色の髪をした少年が現れた。
「 ・・・? 」
?? お兄ちゃん ・・・ じゃないわ
・・・ 誰??
あ。 009。 そうね?
彼女は口を開かず まじまじと彼を見つめている。
「 ?? なに? ぼくの顔になんかついてる? 」
「 ・・・・ 」
「 あ 洗濯モノは取り込んだよ〜 」
「 ・・・ あ そう? 」
やっと 声がでた。
「 あのさ 買い物に行ってくるから リストをく書いてくれるかな 」
「 か いもの ・・・? 」
「 ウン。 ― あ まだ < 戻って > ないのかな
ああ ごめん。 ゆっくり休んでなよね。
ぼく 買い物行ってくるね〜 きみの好きなオレンジ、買ってくるから 」
じゃあね と 笑顔をみせ、ひらひら・・・手を振り
彼、 009 は 家の中に引っ込んでしまった。
「 ― あ ・・・ 009 ・・・? 」
戻ってない って どういうこと ・・・?
わたし どうかしてるの
目の前に手を広げてみる。 陽の光に翳す。
相変らず白くほっそりとした指は どれもちゃんと動く。
・・・ 当たり前 よね?
だって わたし、どうもしていないもの。
あ。 さっきの夢 のこと?
あの・・・戦争映画みたいなヘンな夢 ・・・
! ち が う ・・・!
「 わたし 003。 ミッション終了したばかり。
ええ 今朝 帰ってきたばかり でしょ?
夜明け前に ドルフィン号を降りた はずよね? 」
彼女は もう一度辺りを見回す。
さわさわと庭木が揺れている。 稚い緑がぽちぽちと見える。
・・・ これ 現実?
つい昨日まで 硝煙くさい空気の中にいた わ
ううん まだ現場でわたしは 夢を見てるの?
え ?? どっちが現実の世界 ・・・?
「 フランソワーズ? どうだね ・・・ 」
「 ・・・ え ? 」
落ち着いた声に 振り替えれば、ギルモア博士が立っていた。
「 あ 博士 ・・・ 」
「 お前は殊の外、神経を酷使する任務じゃからのう ・・・
現実に対応するには 時間もかかろうて 」
「 現実 ・・・ ですか 」
「 うむ。 神経疲労にはのんびり過ごすのが一番じゃ。
ゆっくりお休み 」
博士は 透明な液体で満ちたグラスを差し出した。
「 スパークリング・ワインじゃ。 よかったら飲んでおくれ 」
「 まあ ありがとうございます。 」
「 膝掛けは ああ あるな。 ・・・すまんなあ 」
ぽん、と彼女のアタマを優しく押さえると 博士は
ため息をつき つき 戻って行った。
彼女は そっとグラスに口をつけてみた。
ほんのり甘味のある液体が 口の中でぱちぱちと弾ける。
飲みこめば 咽喉がふわ〜〜っと温かくなった。
・・・ ん〜〜 美味しい!
この味 知ってる! 好きな味だもの。
あら なんだか身体が 軽い わ
ふわり。 身体全体がお腹の底から 浮き上がる気分だ。
ふう ・・ ん ・・・
ああ そう ね ここが わたしのお家。
そうよ わたし、ここで暮らしているの。
そうよ わたし、また踊っているの。
そうよ わたし。
003 じゃなくて フランソワーズ だわ!
わたし 帰ってきたわ。
ええ 仲間たち 皆 いつもの世界 帰ってきたの!
フランソワーズは しゃんと身体を起こした。
そろり、とカウチから脚をおろした。
カウチの側には 庭用と思われる大き目のサンダルがあった。
カタリ。 きゅ。
足を入れ 踏みしめ ― 立ち上がった。
大地は、 そこは芝生になっていたが すこし湿り気を拭くんでいる。
それは 生命の呼吸 ( いき ) なのかもしれない。
ああ ・・・ これが 大地。
そうよ ここは ウチの 庭
さわさわ〜〜〜 風が軽く木々を揺すってゆく。
風の囁きが 彼女の金色の髪もゆすり 彼女の内に入り込む。
・・・ ただいま。
わたし 帰ってきた わ ・・・
フランソワーズは 振り返り家を見つめる。
テラスから リビングが見通せる。
そこは 皆が寛ぐ心地よい場所 なのだ。
彼女は かっきりと目を開き周囲 ( まわり )を見る。
ん。 わたし達は今朝未明に 帰還したわ。
今回のミッションは ほぼ完遂。
人的被害 ナシ。 物理的損傷 軽微。
メンバーズは 只今休養中。
ここは ギルモア邸。 わたし達の棲み家。
「 ― わたし もう大丈夫。 ええ < 戻った > わ。 」
深呼吸し大きく伸びをした。
「 さあ お掃除しましょ。 あ・・・? 」
耳を澄ませば 微かにピアノの音が流れていることに気がついた。
「 ん〜〜〜♪ ふんふん〜〜〜♪ いい音 ね ・・・
あら でも防音機能が少し落ちてるのかもねえ 」
ちょっと反則だけど < 眼 > を使ってみれば
地下の防音室では アルベルトがピアノ弾きまくっている。
薄い手袋の指が 鍵盤の上を滑らかに動きまわる。
あ。 ピアノ・コンチェルト !
これ 大好き♪
そう ね。
彼は音を刻むことで 負の記憶を消すんだわ
・・・ いい音だわ ・・・
カタカタカタ。 サンダルを鳴らし裏庭に回る。
ギルモア邸の裏庭は 地域の雑木林にも続いていてかなり広い。
洗濯モノ干し場 や ジェロニモ Jr.の温室 があるし
なによりも 畑が多くの畝を広げている。
「 お昼のサラダ、ラディッシュ使おうかな〜 あら?
誰か畑にいる ・・・ 大人?? 」
張大人は 畑にいた。 彼は熱心に畝を掘り返してる。
「 大人〜〜〜 畑のお世話 大変ねえ
」
「 フランソワーズはん ・・・ 大変やないで 」
大人は 鍬を止めない。 いつも物腰の柔らかい彼は土を見つめたままだ。
「 え ・・? 」
「 土は ちゃんとお世話せなあかん。
わてら 土からの恵みで生きてる。 土が育んでくれはった命、
頂いてるんや しっかりお世話するん 当たり前や 」
ザクザクザク ・・・ ザクザク ・・・
彼は畝を掘り返し コンポストで作った肥料を混ぜてゆく。
「 いっつもおおきに ・・・ お返しですよって
受け取ってやあ 」
大地に話しかける彼の顔は 穏やかそのものだ。
火を吹く龍 は 大地を愛しているんだわ
邪魔はしません ・・・
フランソワーズはそっと側を離れた。
「 ふう ・・・ あら ジェロニモ Jr.は どこ?
温室の中 にはいないわねえ ・・・ 」
少しだけ < 眼 > を使ってみれば ―
寡黙な巨人は 邸からそんなに遠くない崖にいた。
崖に穿たれた窪みで 瞑想をしている。
海風と 海洋の飛沫 が 遠慮会釈なく飛んでくる。
そんな中 彼は身じろぎもしない。
・・・ あ みつけた!
ふうん ・・・ すごいところに居る
彼らしい けど ・・・
そっか。
空と海に 浄化してもらっているのね
彼のパワーの源 は 大自然 か
「 ・・・? あらあ ・・・ 」
ふ・・・っと < 眼 > を動かした時 見覚えのあるスキン・ヘッドが
視界の端に映った。
「 え ・・・ グレート? 出掛けているの? 」
帰ったらしばらくのんびりしたい 温泉にでも行くかな ・・・
彼はそんなコトを口にしていたのだが。
リビングでごろごろしているのかあな〜って
思ってたんだけど ・・・
え ・・・ 駅向こうのショッピングモールにいる?
買い物 じゃあないわね
あら フード・コート ?
ああいうところのコーヒーは 口に合わないって言ってたのに
しばらく彼の様子を眺めていた。
彼は なにをするでもなく 冷めたコーヒーに口をつけるでもなく
じっと 人混みを眺めているのだ。
・・・ あんなウルサイ所で のんびり??
いろんなヒトがいて 鬱陶しくないのかしら
俳優氏は 時々手を動かす。 ほんの少しだが表情が動く。
よくよく見れば 身体全体も微かに揺れているのだ。
あ。 見てる んだ? 観察?
そっか ― ニンゲン観察 ね
う〜〜〜ん さすが名優〜〜〜
次の舞台のため?
きっと そうね !
誰も彼には気づいていない、いや ただのしょぼくれたオッサンがいる、
くらいにしか思っていないだろう。
ああやって 充電しているのね
彼は 根っからの俳優なんだ ・・・
「 さ。 わたしも 充電しなきゃ!
のんびりしているヒマはないわ 皆に置いてゆかれるもの 」
フランソワーズは サンダルを鳴らし、勝手口から邸内に入った。
カタン ― 低いドアからキッチンに上がれば ・・・・
ジャ −−−− ・・・・
「 あら シンクの蛇口が ・・・・ 」
水音に慌ててシンクに駆け寄れば 調理台の前には意外な人物がいた。
「 は 博士??? 」
ギルモア博士が 腕まくりをしてジャガイモを剥いている。
「 おお フランソワーズ。 顔色、よくなったのう 」
「 ええ ・・・ あの博士 なにをしていらっしゃるんですか 」
「 なにって 夕食の準備じゃよ。 なに 簡単にカレーさ
」
「 は 博士が ですか?? 」
「 ははは 大人の助手さ。 ワシだってこれくらいはできるぞ 」
「 え ええ それは ・・・ あ わたし やりますから! 」
「 いやいや ・・・ やらせておくれ。
こうやってなあ ジャガイモを剥いたり 人参を切ったりしていると
なんかこう〜〜 リラックスするんじゃ 」
「 はあ ・・・ 」
「 すまんが 好きにさせておくれ。 大丈夫、夕飯はちゃんと美味いものを
つくるから さ 」
「 ふふふ ・・・ それじゃ お願いします 」
「 おう 任せて置け 」
ああ これが ―
博士の < デトックス > なんだわ
ふふふ 特製カレ― 楽しみにしてますね
フランソワーズは そっとキッチンを抜けた。
「 ふ〜〜ん それじゃ リビングでも片づけようかしら 」
カタカタカタ −−−−−
果たして リビングには先客がいた。
全員共有のPC ― 検索くらいにしか使ってはいないごく普通のPCだが
その前には ピュンマが陣取りキーボードを叩いている。
「 あら ・・・・ ピュンマ? ゲーム? 」
「 〜〜〜〜〜〜 あ?? なに?? 」
「 あのね ゲームでもしてるの? 」
「 はあ??? なんで 」
「 だってすごい勢いだから 」
「 あのですね。 僕は 今回のミッションのデータをまとめて
検証してるんだ、仔細にね。 」
「 え・・・ 」
「 ジェットは 直接NYに戻ったろ?
アイツから 大雑把だけどデータが届いたから ね 」
「 へ え ・・・・ 」
「 なんだよ その 信じられない〜〜って顔 〜〜 」
ピュンマは やっとモニターから顔を上げた。
「 ねえ リラックスしたら? 」
「 う〜ん きっちり整理しないとさ〜
なんか こう・・・寝覚めが悪いんだよね。
ま これが僕のリラックス法かなあ 」
「 へえ ・・・ ピュンマらしいのねえ
ごめんなさい、 もう邪魔しません 」
「 サンキュ♪ 」
ばちん、とウィンクをすると 彼はまたPCの中に戻っていった。
やっぱり ニンゲン・コンピュータ かも・・・・
フランソワーズは ちょっとため息をついた。
カチャン ― 玄関が開いた。
「 ただいまあ〜〜 」
のんびりした声が聞こえてくる。
「 あ ジョー! お帰りなさ〜〜い 」
彼女は飛んでいった。
「 あは フラン〜〜 ただいまあ〜 買い出し、完了〜 」
「 あ 荷物、キッチンに持ってゆくわ 」
「 サンキュ。 じゃ こっちの袋 頼むね。
卵 入ってるから気をつけて 」
「 了解〜 」
「 ジョー? お帰り〜〜 温室でトマトときゅうり、
採ってきてくれるか 」
キッチンから 博士の声が響いてきた。
「 はあい 了解〜〜 」
「 わたしも行くわ 」
二人は 買い物袋をキッチンに置くと そのまま裏庭に出た。
― 温室の中は 春 だった。
「 わあ〜 トマト たくさん赤くなってる〜 」
「 ほんと! キュウリもいっぱいなってるわね 」
「 うん 収穫しようよ 」
「 ええ 」
二人は トマトの棚の前に立った。
「 ・・・ ねえ ジョー。 聞いていい 」
「 あ これ美味しそう〜 え なに。 」
「 あの ね。 ジョーはどうやって チェンジするの?
そのう〜〜 気持ちを ・・・ 」
ジョーは もぎ取ったトマトをしばらく じっと見ていた が。
「 ぼく? ― ぼくは 空 みるんだ。 」
「 空 って あの 空? 」
「 ウン 」
「 どこにいても 空はみれるからね。
えへ・・・ でも一番は 身近な空 かなあ 」
「 見近な空 ? どこにあるの? 」
「 えへ ・・・ きみの瞳の中さ 空 あるもん。 海もあるな〜 」
「 ・・・ え ・・・ あ 」
茶色の瞳が にこにこ・・・彼女を見つめている。
ああ ・・・ 彼の中には 大地 がある
わたし この大地が 好き!
「 ねえ きみは? どうするの 」
「 わたし? わたしは 大地をみるの。 」
「 大地? ああ 土かい 」
「 それもあるけど アナタの中の大地を 見るの。
そうすれば いつだって本当のわたし を保てるの 」
「 え〜〜 だは〜〜〜 そっかな〜〜〜 」
きみの青 あなたの茶色
きみの空 あなたの大地
きみが あなたが いてくれるから ―
************************** Fin. *************************
Last updated : 02,25.2020.
index
*********** ひと言 ***********
< 切り替え > って ムズカシイですよねえ
00ナンバー達は 特に ね ・・・
こんな日常があるのかもなあ〜〜って (*_*;
あ 当サイトでは アルベルトは ピアニストです☆